男子の枕中記

日記ブログです。映画と本の話をすると思います。

11/27-12/27の記録:リチャード・ジュエル、佐々木、イン、マイマイン、ワンダーウーマン1984、ソウルフル・ワールドの感想など

最期の振り返りから一カ月も経ってしまった。

11月27日、マンダロリアンのアソーカ登場回だったみたいだ。
28日、清田隆之『さよなら、俺たち』を購入。フェミニズムを受容した男性による自己省察のエッセイ。こういう本がもっと増えてほしい。

 

12月1日、大学図書館へ向かったところ、入構予約日を一日勘違いしていた。帰りに川上未映子『ヘヴン』を購入。いじめ側のアンモラルで、力一元論的な言説とどう対峙するのか。作中のコジマはキリストよろしく(?)"弱さ"をもって立ち向かったが、それでは上手くいかない気がする(ニーチェ的な意味で?しかし奴隷道徳批判がいいとは思わない)私は今、力に興味がある。
12月2日、文化人類学の授業でリアぺを褒められた。「文章の上手さでいえばピカイチですね。雑誌の評論に載っけられそうな。一年生でこれだけ書ける人もいるということで、皆さんも読んでみてください」と言われてめちゃくちゃ嬉しかった。けど「雑誌の評論」なのでアカデミズム的な評価ではないんだよな、とちょっと悲しかった。
 午後は大学図書館へ。4冊借りたのだが結局2冊は読まずに返した。しばらく放っていてしまった森岡正博『生まれてこないほうが良かったのか?』を読み終わった。東洋思想というのに手が伸びなくてさ......でもアートマンはちょっと面白そうだ。あとそもそも反出生主義に興味があったわけじゃなかったなと。でも永井の独在論の議論を踏まえて人生の哲学をしようとする試みというのは興味深いし得られるものがありそう。続編も読もう。
12月3日、『この世界の片隅に』を観た。繊細な描写の数々を咀嚼する集中力が無い状態で鑑賞してしまった。

12月4日、『エイリアン3』を観たが何も覚えていない。ゲンロンで配信された東浩紀×國分功一郎の対談動画を視聴。動物化する大衆にどういうシステムをデザインするかという「エンジニア的」な00年代の東の議論にはあまり乗り気ではない。私はそこに官僚・エリート主義を感じ取ってしまう。しかし、ここで東が唱えていた悪の愚かさ、動物的な悪という概念や分析はかなり面白いと思った。
12月6日、『ズートピア』と『ほしのこえ』を観て、『天気の子』を劇場以来観直した。時間の差が新海監督のモチーフなんですね。『天気の子』はラストの「大丈夫」がどういう意味なのかがまだ飲み込めていない。新海誠の次回作が楽しみだな...。


12月10日、高橋ヨシキ、てらさわホーク『ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!』と岸政彦『100分de名著 ブルデュー ディスタンクシオン』を購入。Twitterのオタクはもっと文化資本の話をしろ。一部からは決定論じゃないんだから変に衝撃を受けなくても...という声もあるが、趣味をキラキラしているものとする風潮をもっと相対化してもいいだろう。
 晩には『リチャード・ジュエル』を観た。サム・ロックウェルが驚くほどナイスガイだ。家宅捜索後の口論でのポール・ウォルター・ハウゼンの演技も良かった。最後の取調べでのふるまいも素晴らしい。イーストウッド作品、物語は淡白だけど、しっかーり観客の心を引っかけるシーンや演出がある。そこを愛でるのがオツだ。しかし新聞記者の脚色はどうかと思うぞ、マジで。

12月11日、大学図書館へ。5冊借りたのだがまだ2冊しか読み終えてない。自室が凍えるほど寒かったのでデスク下にパネルヒーターを導入した。あったかい。
 シャニマスのクリスマスシナリオイベント「明るい部屋」が発表された。すごいコミュだった。思い返すとはづきさんのメインプロットと色々なサブプロットと越境要素が入り組んでいて複雑なコミュだった。Pが女性と二人でいるところを目撃された騒動で三峰が沈黙を保っていたのが面白かった。彼女はどういう表情をしていたんだろうか。これきっかけでバルトの写真論に関する本を読みました。現象学は元より興味があったので普通に面白かった。

12月12日、『シンドラーのリスト』を観た。想像を絶するユダヤ人の窮状よりも、全能感に酔いしれ暴力を働くナチ側に心を動かされてしまったな.....。やはり自分には権威主義的で安心して日和見したいという気分があるのだなと自覚する。
12月13日、ほうじ茶が美味しいカフェに行った。

12月14日、トイカメラを購入した。LIL J『HARLEM feat. Lifeless』を聴いた。凄くいい。ヒップホップ特有のミソジニー/マッチョなリリックはどうかと思う。しかしだ、この曲はとても面白い。ヴァースはドスが効いた低音とウィスパーボイス、だけどフックはD.Oライクなハイトーンだなんて最高じゃないですか?しかもこのフックが聴いてて楽しい。他の曲もいくつか聞いたけどLIL Jはなかなかの腕前のフック職人なんじゃなかろうか。

12月15日、『佐々木、イン、マイマイン』を観た。予告を観て「あー、すごい変な空気感を漂わせた邦画が公開されるんだなー」と思っていた所アトロクで映画評をやるというので鑑賞。
 全体として好きかは分からないけど、カラオケのシーンが良かった。女性に対するファンタジーじゃない?と思わないでもないけども。明け方のカラオケの遠景ショット、「また」のやりとり、別れてから笑いがこみ上げてくる苗村のカット、一連の流れすべて心に残るシーン。佐々木が美術部だったり文庫本貸してたり文化系の風も漂わせてるのも良かった、佐々木がただのバカ騒ぎする男じゃないことを私たち観客は知っているのだ。この映画の佐々木へのまなざしは匿名ラジオの「親友」のコーナーを彷彿とさせる。あと、佐々木のパチンコ友達が中学の同級生の"DQN"的な人に凄く似ていた。なんなら佐々木にも似ている感じの人がいて、そのDQN的な人と仲良かったな...。

12月16日、ユリイカ9月号『女オタクの現在──推しとわたし』を今になって購入。オタクとジェンダーに興味があるので、おもしろい。しかし男オタクもジェンダーの話をしなければいけないのだよ。BRUTUS読書特集も買った。
12月18日、マンダロリアンs2最終回、編集のテンポとかショットの代わり映えの無さで普通に出来が不満だった。みんな絶賛だったけど。あの時期の「あの人」ってバトルフロントで既に描かれてたんじゃないの?出し方とかは続三部作のノリと同じだと思うんだけどな......。旧三部作の熱心なファンじゃないからかな。
 『初恋』を観た。主人公カップル2人よりもヤクザの抗争、特に染谷将太の方が面白いじゃねえか!とか思っちゃった。でも、一人のボクサーが勝利のガッツポーズを取れるようになるまでの物語なんだ!っていうラストは美しかったな。

12月19日、漫画喫茶へ行って機動警察パトレイバー『東京喰種』を読んだ。パトレイバーはシーンとシーンのつなげ方の演出がイカしてる。東京喰種も、最初は読むのキツイかも...とか思ったんだけど読むうちに上手くなって問題なく楽しんだ。あたりの前のことなのだが、漫画家は連載中に漫画の技術が上達する。このことを忘れていた。『:re』も途中まで読んだ。身体と心の性自認に違和がある六月が、捜査でドレスを着た時に男性から受ける視線を恐れる描写があって、作者は女性かな?と思ったら男性だった。うーん私の中のジェンダーバイアスよ。

12月20日ワンダーウーマン1984を観た。思想的には私好み。メッセージが強く打ち出されるクライマックス周りに感動を覚えた。TVと映画のメディア論的差異を感じ取れ!と言わんばかりのガル・ガドットの顔が目に焼き付いている。何より惹かれたのは悪役マックスの造詣とペドロ・パスカルの演技だったが。批判的な意見も数多く見られるように全体として良い作品ではないが、クライマックスのペドロ・パスカルが抜群に光ってたから好きな作品だ。今のBLMに賛同する左傾化する?)若者たちにはこれくらいの資本主義批判がマーケティング的にも良いっていう判断なのかな。ビッグバジェットフランチャイズ映画がよく言うよ......と思う気持ちと、素直にそのメッセージ受け取ったり!という気持ちとで分裂してしまう。

12月21日、友人と電話。「なんかいつもより楽しそうじゃない?」と言われた、実際嬉しかったので。
12月22日、『悪人伝』を観た。遵法精神溢れるクライマックスの決着と極悪非道なラストの落とし方と網越しの笑みが最高。モラルの高さを維持したまま終わりを迎えてもそれはそれで面白い作品になり得ただろうけど、「こんな奴に人権があるかよ!」と狼藉をはたらいた裁判をターニングポイントにしてアンモラルな空気を残したのは任侠モノとして筋が通ってて気持ちがいい。
12月24日、伊藤亜紗『手の倫理』とイアン・ワトスンオルガスマシン』を購入。まだ読み終えてないです。
12月25日、『ブルータル・ジャスティス』、『透明人間』を観た。年間ベスト駆け込み枠...。どっちも面白かった。
12月27日、『ソウルフル・ワールド』を観た。NYの街並みを写す美麗な各カットと「一瞬一瞬を大切に生きろ」というメッセージ、映像とテーマの一致があった。あと高次元思念体のジェリーとテリーの光文社古典新訳文庫みたいなデザインも好きだ。出生の準備・人生のきらめきと目的の倒錯というテーマは反出生主義とmeaning of lifeの議論と接続したくなってしまう。「人の"sparks"は人生の目的じゃないよ、人間というものは単純ですね...」最高だと思う。

 

以上、過去一カ月の振り返り日記でした。